死んだ―――そう思った直後に目の前が真っ暗になった。
ただそこには黒い世界が広がっていて、なにもなかった。
僕はぼんやりと目の前を見つめる。
すると、月が見えてきた。
月が語りかけてきた。
「君にはこれから、また人間を好きになってもらうよ」
ふざけるな、あんなことがあったんだ…もう人間を好きになんてなれない。
だけど月は僕のことを無視し、砕け散って青白い光になった。
黒い世界に光が広がり、意識が遠のいていく。
今度はどんなことが起こるのだろうか、あまり期待せず意識を手放す。
目を覚ますとそこには大空が広がっていた。
澄んだ空気を吸い込んで僕は立ち上がる。
ふと周りを見渡す…すると、同年代の男女を何人か確認できた。
なんでこんなところに人がいるんだろう?
不思議に思っていると、またあの声が聞こえてきた。
「死んでしまった君たちにはこれから、ここで人間を好きになってもらいます。人間を好きになるまで、自由になれないよ」
「ちなみにコレは、夢なんかじゃありません!正真正銘、現実です!」
――嗚呼、そうだ。
僕はもう死んだんだった。
そして、死んでもまだ苦しまなくちゃいけないんだ。
死んでも…まだ…
じゃあ、なんで僕はこうしてここに居る?
写真素材:写真素材 足成